コーヒー一杯分の美談 *後編* 《ars》 (ページ30)

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さよならエピローグページ30

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私は櫻井先生のことが好きなのだと気が付いたのは、もう半年以上も前のこと。

ふいに貴方が口にしたとある人の名前のせいだった。

「え……先生の彼女さんって、Aって言うんですか…？」

「そうだよ。そういえば、お前と同じ名前だな」

そんな風に言ってコーヒーを飲む貴方から、私はなんとなく目をそらす。

私と同じ名前を紡ぐ貴方が、とても愛しそうな表情をしていたからだった。

貴方がその顔で呼ぶ名前が私のことだったらよかったのに。

そう思って。

私の名前ではないことに泣きそうになった。

なんだ、私は、先生のことが好きなんじゃん。

先生にキャッキャと群がっていた女子たちを冷めた目で見ていたのに、結局私も同じじゃない。

そんなことに気が付いて、ぎゅうと心臓が締め付けられた。

だって貴方には、大好きな恋人がいるんだもの。

初恋は叶わない、なんて。

どこかで聞いたありふれた言葉を思い出した。

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