さよならエピローグ ページ27
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ふわりと香るコーヒーの匂いに目を閉じていたらこつんと貴方の手が私の頭を小突いた。
「ほら、さっさと解け」
「はーい」
ペンを握って問題に向き直って、けれどすぐにペンが動かなくなる。
「ねぇ先生、ここわかんないですけど」
「ん、どこ……お前、授業聞いてたのか」
「……聞いてましたよ」
「ったく…」
貴方が頼られると断れないの知ってるから。
困った顔して私の横に椅子を引っ張ってくる貴方を見たいだけ。
左利きの私を気にして貴方は必ず右側に座る。
問題なんて難しくなくても、こんなことしか私にはできないから。
「んで、ここをこうして……」
「あ、ほんとだ、解けた…！」
「ゆっくり解けば難しくないだろ。ほら、残りも頑張って。全部解けたらご褒美上げるから」
「ご褒美？」
我ながら現金だけど、そんな言葉に貴方の顔を見上げる。
座ると一気に背丈の距離が縮まるのはそれだけ足が長い証拠。
いつもピタッとしたスキニーを履いてて、長くて綺麗な足を組んで椅子に座っているところを見るのが私は好き。
その態勢のまま貴方が少しだけ笑う。
「そう、ご褒美。だからほら、もうちょい頑張りな」
ポンと頭に触れて、貴方の大きな手が離れていく。
立ち上がるのかと思ったらそのまま椅子に座りなおして、コーヒーを片手に授業の準備を始めてしまった。
問題を解くふりをしてちらりと盗み見た横顔は真剣で、格好良くてドキドキする。
そうしているとたまに視線に気が付いて、こっちを見た整った二重の目がきゅっと細められる。
「さぼるな」
「はーい」
低い声に促されてまた問題用紙に向き直った。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年11月6日 22時
