コーヒー一杯分の美談 *後編* 《ars》 (ページ25)

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さよならエピローグページ25

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私はこの日初めて先生の恋人さんも同じミステリ作家が好きなのだと知って。

私もちゃんと読んでるよって、急にアピールしたくなって、読み終わったばかりの最新刊、エピローグの話を持ち出した。

きちんと読み終わってるからできる話だから、読んでるアピールが出来るかもと子供心に思っていたのかもしれない。

「ねぇ先生、そういえば最新刊読み終わった？」

「おー、ちょうど今朝読み終わった」

「私も昨日の夜読み終わったよ。エピローグが綺麗だったからお気に入り」

「確かに、終わり方もよかったしね」

先生が好きだといったミステリ作家の本が順調に家に増えている。

先生の恋のアイテムの一つだったそれを、私は意味もなく祈るような気持ちで読んでいた。

そうしていつの間にかビーカーでコーヒーを飲むのが当たり前になって、スティックシュガーを三本とフレッシュミルクを二つ淹れないと飲めなかったコーヒーはスティックシュガー二本とフレッシュミルク一つで飲めるようになった。

たった一杯コーヒーを飲むそのわずかな時間でも、先生と二人で話ができる時間は私にとって大切なものだった。

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