コーヒー一杯分の美談 *後編* 《ars》 (ページ24)

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さよならエピローグページ24

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その日から私はたびたび放課後にテキストとノートを持って化学準備室に押し掛けた。

先生はわりとそこにいることが多くて、先生に会えた日にはあそこが分からないここがわからないなんて駄々をこねる子供みたいに質問を重ねた。

それでも先生は困った顔をしていつも私の相手をしてくれる。

勉強を終えると、「ご褒美」なんて言いながらいつもビーカーに入れたコーヒーを私に飲ませてくれた。

「先生、この作家さんいつから好きなの」

「中学の時から」

「私と同じくらいの時にはもう好きだったの？」

「そうだね。これがなかったらあいつとも仲良くなれてなかったし、特別な作家だよ」

「へー……あいつって、彼女さん？」

「あ、あぁ…悪いつい」

聞かれない限り先生は彼女の話をしなかった。

だけど時々今みたいに口を滑らせて、それを突っ込むと照れたようにはにかみながら彼女さんとの恋の話を聞かせてくれた。

あんまり聞きたくないなと感じる想い半分。

恋の話をする先生の顔が好きだなと感じる想い半分。

複雑で、だけど私はコーヒーを飲み終わるまでその話を聞いていた。

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