コーヒー一杯分の美談 *後編* 《ars》 (ページ23)

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さよならエピローグページ23

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「ほら、コーヒー。ビーカーで飲んだことないだろ」

得意げに先生が差し出したのは実験なんかで使う透明なビーカーに入れられた深い色をしたコーヒーだった。

スティックシュガーとフレッシュミルクが数個ずつ添えられている。

「子供には苦いだろうから、好きなだけ入れな」

そう言って笑った先生は、長い足を組んで椅子に座ってなにも入れずに深い色したコーヒーに口を付けた。

私がお弁当を広げる横で先生も紺色の二段弁当を広げていた。

その中には美味しそうなお弁当の品がぎゅうぎゅうに詰められている。

下の段はオムライスになっていて、それを見た先生が「オムライスだ」なんてちょっと弾んだ声を出した。

「それ、先生が作ったんですか？」

そうじゃないことなんて考えなくてもわかるのに、気が付いた時には私はそんな質問を口走っていた。

それを聞いた先生がぱたぱたと手のひらを振る。

「俺料理全然だめだから。彼女が作ってくれたんだよ」

そう言っていただきますと手を合わせた先生は、本当に幸せそうな顔をしていた。

そんな先生の顔からなんとなく目をそらした私は、さっきの授業でよくわからなかったことがあったことを思い出して事務的に先生に話しかけた。

「あー、あそこムズイよな。じゃあ放課後にテキストとノート持ってここにおいで。たぶん時間取れると思うから」

「はい」

にこりと笑った先生は「じゃあ放課後な」なんて低い声で囁いた。

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