コーヒー一杯分の美談 *後編* 《ars》 (ページ22)

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さよならエピローグページ22

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思いがけず先生と二人きりになったのは、席替えで私の席が教卓の目の前になってすぐのことだった。

「星川、悪いけど運ぶの手伝ってくれ」

「はい」

休み時間で騒がしくなる教室の中でちょっとだけ私に顔を寄せて言った先生に、私はこくりと頷いて見せた。

授業で使ったプリントを運ぶ道中、私はちょっとドキドキしながらこの間買って一昨日読み終わったばかりの先生が好きだといった作家の最新作の話題を口にした。

「あぁ、星川もあれ読んだのか」

「はい。先生も読みました？」

「ん。発売日にゲットして翌日に読んだよ」

やっぱり、先生も読んでた。

それが嬉しくて笑顔になると、先生が「ふ」と笑って私を見た。

「古い作家を読むんだね、星川は」

「あ……」

先生が好きだって言ってたから。

そう言いかけて私は言葉を飲み込んだ。

そんなことを先生に言って、私は何がしたいんだろう。

化学準備室にプリントを置くと、部屋を出ようとした私を先生が引き留めた。

「ご褒美にコーヒー淹れてやろうか」

くりんとした大きな目で先生に覗き込まれて、私は頬が熱を持つのを感じながらこくこくと首を縦に振った。

それに笑った先生が「じゃあ弁当持っといで」なんて言うものだから、駆け出す勢いで教室を目指した。

だけど先生が廊下を走るなっていつも言ってるから、競歩みたいになりながらお弁当を持って化学準備室に戻ってきた。

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