さよならエピローグ ページ19
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教師としてはピカピカの一年生だという櫻井先生は私たちのクラスの化学の授業が担当だった。
教師一年目なんて世間的に見ればまだまだ若造かもしれないけど、中学二年の女の子からしたらすごく大人でイケメンのお兄さんだった。
「ねぇ先生、彼女さんといつ知り合ったの」
「私も知りたーい」
授業の後のお昼休み、櫻井先生を取り囲んでクラスの女の子たちがキャッキャしているのを私は化学の授業の復習をしながらうるさいなぁなんて思っていた。
「出会ったのは高校の時だよ」
仕方ないなぁって顔をして、困ったみたいに凛々しい眉を下げて櫻井先生はそう言った。
集る女子生徒を無下にすることはできないのか、ちらちらと時計を気にしていた。
「先生、彼女さんの写真ないの？」
「ないよ」
「えー、携帯に入ってるでしょ？」
「校内は使用禁止です。使ってる奴いたら取り上げるぞー」
ちょっと大きな声で櫻井先生が言った声に私の隣の席に座っている男子生徒が慌てたように携帯を机の奥へと押しやった。
優しくて格好良くて授業の分かりやすい櫻井先生は学校の女生徒だけじゃなくて女性教員にも大人気で。
廊下で食事に誘われている櫻井先生の横を何度か私は真顔で通り過ぎた。
「彼女がいる」と私たち生徒に隠すことなく言っていた櫻井先生はどこでもそれを貫いているようで、最初はぐいぐい迫っていた女性教員たちも全くもって意味がないと思ったのか次第に櫻井先生ブームは落ち着いてはたから見る限りではいつもの日常が学校に戻ってきた。
けれど。
そもそも櫻井先生というのはすさまじくモテる人種のようだ。
日誌なんかを提出しに職員室に行くと櫻井先生のデスクに可愛らしい手紙が置かれていたりすることがあって、私たち生徒の視線を追ってそれに気が付くと櫻井先生は決まってその手紙を机の引き出しにしまっていた。
家に持って帰ったのかどうかは私にはわからない。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年11月6日 22時
