能天気たちの特等席 ページ11
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その日もいつもの場所でいつもの缶コーヒーを片手に俺たちは校庭を見下ろしていた。
「で、兄貴から絵が送られてきたんだけどさ、あ、写真ね。すげーの」
「…そうなんだ。潤くんいつも言ってるもんね」
「あぁ…でさ…」
たまたま売り切れだったせいでいつもと違うブランドの缶コーヒーを持ったそいつは俺の話を話半分に聞きながら缶コーヒーを開けて、一口飲んだところでそれを下ろした。
「なんか、苦い……」
「あー、いつものが売り切れてて違うブランドのやつだから。言い忘れてた」
「そっか……はぁ…」
「………どした」
分かりやすいため息をついてそいつが窓の外を見つめているから、ついつい問いかけて少しだけ後悔。
どこか切なげな目をしたそいつの視線の先で、華麗にホームランを決める男の姿に気が付いたからだった。
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二宮先輩ってカッコイイよねと、そいつが最初に言ったのは一年生の文化祭の日だ。
人に酔ったのか準備の疲労が溜まっていたのか立ち眩みを起こしてしゃがみ込んでいたところに声をかけてもらったそうだ。
水を一本買ってくれて、落ち着くまでのほんの数分のことだけど傍にいてくれたんだと、教室に戻ってきたそいつはどこかきらきらした目で言った。
そんな目で俺を見たことは一度もないくせに、時々見かける上級生をまるで眩しいものでも見るみたいに一心に見つめる。
別に視線が合う必要はないんだと、相手は気づいてないじゃんと乱暴に言った俺にやっぱりそいつは能天気に言っていたのだ。
そんな目で俺を見ないじゃないかなんてずいぶんと大層なことを思ったものだ。
そんなことはそいつの勝手であって、俺の窺い知るところでは全くない。
そのはずなのに、いつからか二宮先輩を見つめるそいつの横顔を、見つめてばかりいる気がする。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年11月6日 22時
