コーヒー一杯分の美談 *後編* 《ars》 (ページ1)

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臆病者と白昼夢[N] ページ1

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「実は私、あの頃二宮先輩のこと好きだったんですよ」

久しぶりに会った一つ年下の後輩はますます綺麗になったその笑顔で懐かしそうに言った。

驚く俺に悪戯に成功したみたいな顔をして笑う後輩は「ホントですよ？」とこてんと首を傾けて俺を見上げる。

上目に見つめられて動揺を隠すみたいに視線を外す俺は、数年越しにただ臆病者だった自分を知った。

〈臆病者と白昼夢〉

同窓会ってものはもっと大人になってからやるもんだと思ってたし、行ってみたら実際それは同窓会なんて感傷に浸るものじゃ全くなかった。

段ボールのガムテープをはがすビリビリと言う音が響く教室で俺は大きくため息をついた。

「はあ」

「ふふ、仕方ないですよ二宮先輩。後輩の面倒を見るのは先輩の義務ですよ」

「……そーだね」

開けた箱の中から古い委員会の雑誌を取り出して机の上に重ねて、俺はまた一つため息をついた。

同窓会だと思ってきてくださいよ！なんて高校時代の後輩に言われて仕方なく行ってみればそれは同窓会でも何でもなくただ単に委員会の過去資料整理の数合わせだったわけで。

現れた俺たちを現役の学生は知らないわけで、呼び出した二つ年下の後輩男子の頭を俺は無言ではたいた。

そんな俺たちのやり取りを見た後輩がくすくすと笑いながら「来ちゃったから手伝いましょうか」なんてあのころと変わらない声で言った。

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