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「どぉ？質問は？」
立場が逆転してしまったかのような私の物言いに未だにぽかんとしている阿部ちゃん先生。
「…うん、ない、かな」
そして少しの沈黙ののちに、再び私に向かい合った先生はにっこりとその整った顔に笑みを浮かべて、私の決断を応援してくれた。
「茉凛がそんなこと言うと思ってなかったからさ、ちょっとびっくりしたけど俺は茉凛がどうにかして進もうとしてること応援したいって思ってるよ。」
がんばってね、と柔らかい微笑みはまた私に心の底からのパワーをくれる。
あとは照に言ってしまうだけ。
別にひとつ大きな決断をしたからと言っていきなり目にバラ色のフィルターがかかるわけでもない。
変わらないようで、ほんの少しだけ上向いた自分の気持ちに自信と喜びを感じていた。
あっという間に外の世界では蝉が鳴き始め、気温はぐんぐんと上昇していく。
気温の変化についていけなくなった私の身体は起き上がることを拒み、なかなか終業式の日まで阿部ちゃん先生に会うこともかなわず、なんなら照も部活が忙しくて会うこともできなくなっていった。
そして、今日が一学期最後の日。最後の日くらい、と思ってまだ少しけだるい身体を押して照と通学路を久しぶりに歩く。
「茉凛、身体無理させて大丈夫なのか？」
こんな時でも私の心配をしてくれる照はやっぱりとてもやさしい。
ほんの数日間照と離れていただけなのにこんなにも苦しくなるなんて。
やっぱり離れるなんて無理なのかな、でも、少しだけ勇気を出してみたいの。
そんな気持ちを笑顔に隠してなるべく心配をかけないようにしないと。
「うん、大丈夫だよ。今日くらいは頑張らなきゃ」
いつもよりほんのり顔色が悪いことに照はきっと気づいている。
その証拠に照の顔は薄く曇っていて、目じりはほんのり下がり気味。
こんな晴れた日に照にそんな曇り顔をさせてしまうと私の心の天気まで曇ってしまうみたい。
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作者名：彩雪 | 作成日時：2021年8月7日 22時
