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にっこりと笑って低く甘やかだけれどよく通る声で出迎えてくれた。
「二人がそろってきたってことは明日から夏休みか何か？」
もう何年も通っている宮舘さんにはもう私たちの学校生活のことなんて半分くらい筒抜けで。
「そうなんです。ついさっき終業式で明日から夏休みです。」
他愛もない会話をしながらいつもの席に通される。
「ご注文お決まりでしたらお呼びください」
どれだけ仲が良くて可愛がってくれていても、そこはきっちりと私たちのことをお客さんとして扱う宮舘さん。
そんなプロ意識の高さを尊敬していると照は常々言っていた。
宮舘さんは自分の憧れの人だ、と。
兄のような存在だと。
「照、なににしようか」
メニューを広げて、二人で顔を寄せ合ってあーだこーだと言い合う。
「よし、やっぱりいつもの」
もうそれで通じるくらい。
「宮舘さん、二人ともいつもどおりでお願いします」
そう言うとキッチンのほうからひょっこりと顔をのぞかせて返答する宮舘さんの少しお茶目な一面にふふ、と笑いが漏れてしまう。
ここに来たときは私はナポリタン、照はオムライスを頼むのが幼い時からのなんとんく決まり事、みたいな。
「ふふ、宮舘さんの料理食べるのも久しぶりだね」
ここで出されるお冷はほんのりマスカットの香りがして、それだけで特別感がある。
それから、運ばれてくるまでの間、今学期どんなことがあったか、なんて話してみたりして。
唯一私が照以外で心を開いていると言ってもいい自称照とニコイチの佐久間くんの話をしてみたり。
照と話していればどんな時だって時間はあっという間に過ぎていく。
「…でさ、この夏はマジで佐久間と部活頑張るって決めた」
「そっかぁ、頑張ってね、応援してるよ」
「茉凛は？この夏どうしてるの？」
「んー？おばさんのところに行くことになった。」
別にそれはなにも気負って話したわけではなくて、さらっと出てしまった、それだけだったんだ。
「…え？」
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作者名：彩雪 | 作成日時：2021年8月7日 22時
