No rain,No rainbow【S.O】 (ページ8)

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episode１－７ページ8

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このように俺は美術部に黒木がいたら声をかけ、絵を褒めたり、僭越ながらアドバイスもしたりした。
他の部員にもえこひいきになるので、同様のことをした。
今思うとその熱量は違ったけどね。

黒木の大人しく教室の端にいるイメージは変わらなかった。
だって彼女笑わないんだよ。
いつも瞳に寂しさや悲しみを宿してる。
社交性がないんじゃなくて、人と関わるのに臆病なだけなんだと思った。

そう気づいたときから黒木の笑った顔が見たくて、いつも話しかけていた。

「先生……」

「ん？」

「そんな見ないで下さいよ……恥ずかしいですから」

「何で……いいじゃん。黒木の絵は良いから見たいんだよ」

「……集中力乱さない程度にお願いします……」

このとき俺はハッとした。

黒木は困ったようにだけれども笑顔を見せてくれたのだ。

今まで笑わなかった彼女が笑ったのだ。
これは大事件だと言っていい。

俺は彼女の笑顔と昔の自分を重ねた。

―――大野、道は他にある。お前はまだ若いんだから視野を広げてみなさい。

俺にこの道を進むきっかけをくれた担任の言葉を思い出した。

生徒の良い所を伸ばす。
生徒のできなかったことをできるようにする。

それが出来たときが嬉しいと担任は言っていたが、今やっとその気持ちが分かった。

自惚れかもしれないけど、俺が話しかけたことによって、黒木は今まで見せなかった笑顔を出してくれたのだから喜ぶべきだろう。

こうして俺はキミのおかげで教師としてのやり甲斐を見出すことが出来た。

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