To the Legend【ars】 (ページ34)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:12,240 hit

３４　Side You ページ34

・

逃げ馬がいなかったので何がハナに立つのか分からなかった。するといないと見るや田渕先輩とイエローマインが先頭に立った。元々先行脚質ではあるイエローマイン。そしてセオリーに嵌らない田渕先輩。らしいと思った。大歓声を浴びながら1コーナーに入っていく。

アカツキは3番手の内、オペラテラスはその外、ハングアップオンは8，9番手の内、ニューディアマンテは中団後方寄り、デュアルセッションはほぼ最後方に近い位置にいた。2コーナーから向正面へ。

ペースは淡々と流れていく。ファンの人はよく何で速くしないんだよとか後ろをつつけばいいのにとか思うだろうけど、先頭と自分の馬、そして自分と後方の馬の力量差とか末脚とかを考えて皆自分の位置取りに徹するとペースは流れなくなる。誰だって届かないと思ってレースをしていないことは頭に入れといて欲しい。

1000メートルを通過する。モニターには62秒と表示される。遅いペースにスタンドはざわついた。

私がもしこういうレースに乗っていたらと考えると遅いなと思ってしまう。イエローマインの力を考えたら押し切る可能性だってある。もし同等やそれ以上の馬に乗ったら痺れを切らすかもしれないと感じた。

3コーナーから固まっていた隊列に歪みが生じていく。スローで走っているイエローマインに後続が近付いていく。アカツキとオペラテラスがじわじわと接近する。ハングアップオンも内をスルスルと上がってきた。ニューディアマンテとデュアルセッションはまだ動かない。

大ケヤキの向こう側を通過する。ゴールへ向けて心臓が高鳴っていく。馬群が凝縮していく。

4コーナーから最後の直線へ。歓声が高まっていく。

先頭はまだイエローマイン。それにアカツキとオペラテラス、ハングアップオンが迫っていく。4頭が横に並んでいる。

そして一段と歓声が大きくなる。来た、人気の2頭。

ニューディアマンテとデュアルセッションが併せ馬のように先頭へ迫っていく。こうなると私は冷静にはいられない。明文化できない声を上げて応援する。

2頭が残り200メートルで先頭に立った。まだマッチレースが続いていく。クレールさんとミカルさんが合わせ鏡のように鞭で追い、手綱を押していく。

ゴール板の手前で2頭の決着がついた。デュアルセッションが頭差ぐらい出てゴール板を駆け抜ける。

2頭のレースに歓声は止まらなかった。私も拍手を送る。

こうなってくると有馬記念が楽しみになってきた。