３３ Side You ページ33
・
私はジャパンカップの返し馬を双眼鏡で眺めていた。
天皇賞同様強力なメンバーが集まったと思う。
ニューディアマンテがスッと返し馬に入っていく。
改めて綺麗な馬だと思った。
走り方が綺麗でそれが切れ味を生んでると思う。
デュアルセッションが力強くターフを駆けていく。
この走りが今日入れて2戦しか見られないのが残念だ。
直線の爆発力で言ったらこの馬が随一だろう。
ハングアップオン、オペラテラス、イエローマインも眺める。
各馬当然だが仕上がりが良い。
アカツキも双眼鏡の中を通っていく。
私は先程した武岡さんとの会話を想起する。
「和也から愚痴られた？Aちゃん」
「愚痴られたと言いますか、お話を聴きました」
潤くん胃潰瘍で入院したって。
ようやく暮らし始めた二宮先輩の家でそれを聞いた。
「なんとなく恐れていたことが起きたって感じやな」
武岡さんは苦笑した。
簡単に言えば相手方の家に反対されたってことだけど、それは松本さん全体を否定することだから簡単じゃない。
「だからといって俺は彼に対して変わらないスタンスでいることとこうして気を揉むことしかできないけど」
「私も同じですよ」
私はこうして実りのない会話しか出来ない。
だったら私の出来ることはこれまでと変わらず松本さんに接することだと思った。
ライターの中にもいるのだ、彼をどこか軽んじてる人が。
そんなことを考えていたらターフビジョンはファンを煽り立てるようなVTRを流していた。
いけない、今は目の前にあるレースだ。
コラムには◎ニューディアマンテと書いた。
前回に引き続き好感触を得たのとやはりアカシとゴッドオブウインがいないのならこの馬に引っ張って欲しいから。
対抗はイエローマインにした。
オールカマー快勝後、即座にジャパンカップを目標にした意気込みは買うべきだろうと考えた。
単穴以下にはデュアルセッションを落とせなくて、あとは人気上位馬を据えた。
騎手を辞めてから馬券を買えるようになったけど正直儲けにはあんまり興味がない。
予想を出してる手前買っているのとJRAにお布施している感覚に近い。
今回はニューディアマンテから3連複を買った。
スターターが台へと歩いていく。
ファンファーレを弾く楽団が楽器を構えた。
関東のG1のファンファーレが鳴り響く。
高揚感が増していく。
順調にゲート入りが進み、大外の馬が入る。
そしてゲートが開いた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユタカ | 作成日時：2021年3月24日 8時
