４ Side Jun ページ4
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サマースプラッシュがクビ差凌いだ。
スタートを決めたカズはそのままハナを切って押し切った。
カズの天才的な所はそのペース判断だ。
寸分違わずに緻密にラップを刻むから惚れ惚れする。
俺も検量室に行こうと思ったその時だった。
「潤」
俺に声をかけたのは俺の彼女、若葉の兄だった。
彼も調教師をしている。
「何です？」
「うちの親父が空いてる時にお前に会いたいってさ」
「……分かりました」
「じゃあ親父にもそう言っとくわ。また連絡するわ」
身構えていたら胃が痛くなるような連絡だった。
リアルに胃が痛い気がしながら俺は検量室へ下りる。
丁度カズとサマースプラッシュが帰ってきていた。
「カズ、ありがとう」
「こちらこそ。この馬良くなってるね」
「カズの腕があってこそだったよ」
「褒めても何も出ないよ。……どうしたの？」
さっき言われたことが表情に出ていたのだろうか。
カズは鋭いから困る。
「なんでもないよ」
「ならいいけど」
カズは検量室に入っていく。
ホッとしたのも束の間。
「何かあった？」
さっきのレースで2着だった武岡さんにも訊かれた。
メインを勝ったのに顔が青いで、と言われる。この人も鋭い。
「大丈夫ですよ」
「君は相変わらずレッテルがきついね」
前にも言われたことを言って武岡さんも検量室に入っていった。
俺は親父の不倫の結果生まれた。
それはこの狭い競馬サークルに流布していてそれを忌み嫌ってる人が多い。
若葉の父も兄もその一人だ。
それで俺はその家の娘と付き合っている。
ならば答えは明白だろう。
競馬で負けるのは慣れてるけど人生の中で負けるのは慣れていない。
本当に胃が痛くなりそうだ。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2021年3月24日 8時
