３０ Side Masaki ページ30
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アカシが帰厩してきた。
馬運車から下りて松本厩舎へ行こうとすると一つ尻っ跳ね。
たまにするから慣れたものだ。
10メートルぐらい先に記者さんとカメラマンがいた。
アカシの帰厩で紙面が埋められるのなら喜ぶべきだろう。
アカシを一旦馬房に入れて外に出る。
松潤はまだ入院してるから俺がマスコミ対応をしなくちゃ。
松潤とは毎日連絡を取り合って管理馬のスケジュールを組んでいる。
相葉くんの好きにしていいよと言われたけど、それは寂しいもん。
マスコミには予定通りなら有馬記念、元気いっぱいで安心しましたなどと述べて馬房の前に戻る。
「相葉さん」
太田ちゃんが来てくれる。
忙しいだろうに律儀だなと思う。
そういえばニノがやっと家に来てくれたとご機嫌だった。
「アカシ久しぶり」
太田ちゃんはアカシを撫でられる。
アカシは多分いつもいる人的なことを感じていると思う。
「フランスの疲れは癒された感じですかね？」
「そうだね。帰国当初はさすがに疲れ切ってたくらいだけど。アカシはタフだねえ」
撫でてやるとお返しとばかりに胸元に擦られる。
「相葉さんも無理なさらないで下さいね」
「ありがとう。でも慣れたものだよ」
「二宮先輩から愚痴を聞きました。改めて松本さんが背負わされてるものが大きすぎることが分かりました」
「……ねっ。しかも松潤には不可抗力なことでさ」
アカシから松潤の話になる。
この世界にいることを選んだのは彼とはいえね。
松潤を助けてあげたい。
きっとこの思いは皆一緒。
だったら俺のできることは松潤のいない厩舎を引っ張っていくことだ。
「アカシは人の願いに応えてくれるような馬な気がして……。アカシの頑張りで松本さんが元気になれれば良いですね」
「それ分かる気がする。アカシ一緒に頑張ろうな」
背が伸びて騎手になるのを諦めたときから俺は松潤を支えるって決めてたんだから。
それが揺らぐことはない。
俺はアカシの首筋をポンッと叩いた。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2021年3月24日 8時
