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一通り喋って飯を進める。
その間に二人が話すのを聞く。
「松本さんの件って何年前ですか？」
「俺が騎手としてデビューした年だったかな。奥さんを亡くされたばかりの松本先生が愛人とその息子を迎え入れたって栗東まで伝わってきて」
「じゃあ30年前ですか。俺まだ2歳のときですね。30年経っても残るもんなんですか」
「残るんだよ。そういうことは簡単に広まる。現に将大だって知ってるやろ？」
「まあ……そうですね。伝聞されてますね」
「まるでおとぎ話のようにな」
武岡さんから見た潤くんの話を聞く限り、この人はこっちサイドだ。
それだけで安心材料になる。
鯖の塩焼きは食べ切った。
次は生姜焼きを片付ける。
「そうやって武岡さんが言い切ってくれるのは助かると思いますよ」
「俺は別に醜聞に興味がないだけ。フラットに見たら松本くん良い男やん」
「そうですよね。俺も何度か乗せていただいてますけど、ちゃんとした調教師さんですよ」
そう、武岡さんの目は常にフラット。
何かに惑わされたり流されたりすることがない。川崎も同様だ。
たまに俺たちだけが潤くんを守ってる気がしてくる。
でも逆にレッテルを貼ってるのは一部だけと思わせてくれる。
「和也、小さい頃周りの大人たちに大人のやったことに潤くんは関係ないでしょって言ったんだって」
ご飯粒を吹き出しそうになった。
「二宮さんが教えてくれてね。4，5歳やろ、その時。ませすぎやろ」
「さすがですね、和也さん」
「お前はずっとそういう心持でいたんやろ。だったらこれからもずっとそれを貫け。ほんの一部が彼を傷つけてるだけなんだから」
「俺も応援してます」
生姜焼きを片付けると同時に勇気をもらえた。
神や仏じゃないって言ったくせに。
それを言うとたまたまやと素気無く返された。
ツンデレめ。
「お前食うのが早いな。……多少顔がマシになったな」
人に相談すると思い直せる。
俺のすることは潤くんと出会ったときから変わることはない。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2021年3月24日 8時
