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「Aこれはー？」
「捨てないで下さい」
俺は何をやってるのだろうと思いながらAの家を片付けていた。
同棲の約束をしたのにAは仕事で忙しく来てくれる気がしなかったので、俺がこうして仕事中の彼女を相手に断捨離をしている際中なのだ。
貴重品や下着類には手を出せないので専ら服と雑貨を彼女の注意事項の元片付けている。
家電は俺の家にないモノは残しあとは粗大ゴミかリサイクルに出すという算段は出来ている。
もし解消なんてあったらどうするのかって？そんな予定はないけど万が一、いや億が一そうなったら俺が一旦出ていくよ。
Aを見ればノートパソコンでひたすら文章を打っている。
そう俺の彼女は売れっ子なのです。
「なあ、昨日クレールとミカルと秋天の話をしたんだよ」
「どうだったんですか？お二人」
「二人とも自信満々だったよ。特にクレールが」
「そうですよね。あのクレールさんがニューディアマンテが帰厩してから毎週乗ってたっていうんですからね」
クレールは今リーディングジョッキーだ。
東でも西でも引く手あまたな男が一頭の馬の追い切りに乗り続ける。
その意気込みたるや。
「私もこの間まではフランスにいたのでそこまで詳しくは分かりませんが、藤川先生に頼んで付きっきりなんですよね」
「クレールも言ってた。それだけニューディアマンテに期待してるってことだよな。そりゃそうだよなアカシとゴッドオブウインを考えたらここで終わるわけにはいかない」
まるでダービーのときの俺とアカシのようだった。
それが必ずしも実るわけじゃない。
でも何もしないよりはクレールは思ったのだろう。
俺は止めていた手を動かしながら。
「ミカルとデュアルセッションも名コンビだし、宝塚の1，2着がいないならって感じだろうし。他のハングアップオン、オペラテラスも侮れないし。俺が乗ってないのが残念」
騎乗馬がいればまた視点が変わるだろうけどこればかりは。
「アカシとゴッドオブウインがいなくても面白くなりそうですね」
「それはそうね」
また手が止まったので再び動かす。
するとAはエンターキーを大きく鳴らした。
「二宮先輩終わりました」
「よし、じゃあお前はそっちだ」
早く同棲したいと思いつつ片付けながら競馬の話をするのも悪くはないなんて思った。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2021年3月24日 8時
