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騎乗合図がかかる。
俺はヘルメットの紐を締めた。
「じゃあ頑張ってくる」
「いってらっしゃい」
なんとなく面白くない気持ちを抱えたままサマースプラッシュに跨った。
パドックをラストグルッと回って地下馬道。
検量室の前で翔ちゃんと櫻井RHの勝負服に身を包んだ武岡さんが話していた。
地下馬道を抜けて本場場へ。
天気が曇りなのが少し残念だ。
相葉さんのいってらっしゃいを背に返し馬をし、待避所に入っていった。
丁度ミカルと視線が合った。
「どう？カズナリ。サマースプラッシュ」
「ああ良いよ。人気はあまりだけど」
「でも抜けた馬はいないよ」
「つまり俺にもミカルにもチャンスがあるってことだな」
「ぶっちゃけ展開でどうにかなるよな」
後ろから田渕の声。
振り向く。
「素質だったらオクトスも負けてないだろ。重賞で人気になるぐらいの馬だったわけだし」
「でもこの馬順調に使えてないからそこがもったいないよな」
田渕は馬の鬣を撫でる。
「昨日の延長戦か？」
横に武岡さんがついた。
「なんか面白くない。翔ちゃんがそっち側にいるの」
「お前だけの櫻井くんやあらへんで。彼は個人でもクラブでも馬を持ってる大馬主なんやから」
ローリングデイズは乗ったことがない。あまり縁のない厩舎というのがあるかもしれないが。
RHと翔ちゃん個人の回数は多分個人の方が多い。
RHは1頭に400口の会員がいるからどうしてもビジネスになる。
だったら俺より武岡さんの方が喜ばれる。
でも人気はあちら、勝利はこちらだ。実力は拮抗している。
俺が上手く導けば勝機は絶対ある。
集合合図がかかった。
ゲート裏まで馬を連れて行く。
さてどういうレースをするか。
前走がミカルがした競馬、というのもいいが、それには東京の直線は長すぎる。
かといって無難に中団からいってもという感じがする。
このレースペースを握りそうな馬がいない。ならばイチかバチか、か。
そう思いながら3枠6番のゲートに入った。
ちなみにローリングデイズは7枠13番、サターンウィザードは4枠7番、オクトスは7枠12番である。
枠入りが進み全馬入る。
ゲートが開いた。
サマースプラッシュは好スタートを切れた。
周りに主張する馬はいない。そのまま内埒につけた。
後ろにはミカルがいる。さすがだった。
ローリングデイズとオクトスは多分後方だ。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2021年3月24日 8時
