・ ページ2
・
「月曜日って俺たちにとっては休日やけど会長は忙しいんやないの？やっぱ」
「にも関わらず時間を取って下さるなんてね」
「逆に言えば週末とか関係なしにほぼ年中無休なんやろか」
「なんでしょうね。櫻井HDのホームページ見たことあるんですけどやることが多岐に渡ってて目が回りそうでしたよ。そこから毎日色々なことが陣営陣に上がってると考えたら」
「休む暇もあらへん」
一介のジョッキーには想像できない世界が広がっている。
普通に生きてたら交わらない人に競馬場でオーナーとジョッキーとして交わる。
近代競馬の成り立ちがそもそもお金持ちの趣味から始まったわけだから、つくづく競馬は不思議で面白い。
都会の街並の中タクシーにホテルまで連れていってもらう。
タクシーを下りるとなんと櫻井くんがいた。
「翔ちゃんどうして」
「サプライズ。俺聞きたいことがあって。何で武岡さんに俺の秘密とも言えることを伝えたのかって」
そう、俺もそこが知りたかった。
おかげでこの秘密を墓場まで持っていくんだから。
話しながらホテルのロビーまで進む。
櫻井くんとシックなホテルが合っていた。
櫻井くんの運命が少し違ったら大企業のトップにいたはずなんだから当たり前か。
カウンターにいるコンシェルジュに会釈をし、エスカレーターに乗り込む。
高層階にのみ進むものだ。スッーと静かに最上階に着く。
このホテルは最上階にラウンジを置いているらしい。
エスカレーターの扉が開いて目に入るのは大きなガラスに大都会の眺望。
このホテルの半周分の景色が見渡せる。
普段の暮らしは京都だし、仕事場は栗東や競馬場だからどうにも非日常だ。
「茨城のマンションとは全然違うわ」
「そりゃそうやろ」
和也とこのホテルもなんだかマッチしない。
多分普段の暮らしのせいか。
「翔、武岡くん、和也くん」
声がする方へ歩き出す。……緊張する。
「ご無沙汰しております」
「お久しぶりです」
「まあ座ってくれ。飲み物は水でいいかな」
「はい。ありがとうございます」
一人掛けのソファに着席する。
向かいに櫻井親子を見据える。
隣の和也は余裕そうな表情で少しムカつく。
そうしているうちにどこからか出てきたウェイターが冷水を持ってきた。
透明で大きな氷がカランと鳴る。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユタカ | 作成日時：2021年1月27日 9時
