サイドストーリー ページ1
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櫻井くんに彼自身の秘密を仄めかすこと、伝えることはリスキーなことだった。何せ彼のお父さんから内密にしてほしいと言われていたことだから。
なのになぜ彼に伝えたかは以前語ったから詳細は省くとして、要は彼とお父さんを天秤にかけて彼を取ったのだ。
もしそれで保っていたものが崩れたとしたら？考えなくはなかったけどそれよりも彼の人生を明るくする方を優先した。
俺は自分の影響力を自覚してる。武岡が言うんだから、武岡がこういう行動をしたのだからと俺の一挙手一投足が注目される。だから俺が動くことによってどうなるのか見てみたかった。
結果上手くいった。その分犠牲になったところもあるが皆大人だと許してくれることを祈るしかない。
しかし一つ俺の中で問題があった。櫻井さんの許可なしに告げてしまったことだ。数行前の文章と矛盾してるのはよく分かってるけど解決した今ではそれが気がかりだった。
しかし櫻井さんは大企業の会長。競馬場では大レースのときしかお見かけしないしそれ以外での接触は難しい。でも俺としてそのままにしとくのは忍びない。
「武岡さん？どうしました？」
「……和也。それがな」
俺は和也にさっきまでの思考の仔細を話した。こいつは頭が良いしなんやかんやで俺の近くにいるしこちらもあちらも知っているから助かる。
「俺ずっとそこが気にかかってたんですけど武岡さんが自己判断でゴーサイン出したんですね」
「そうだよ。舞い込んだものを利用して櫻井くんを優先した」
「愛されてますね俺たち」
「どうすればそういうおめでたい思考になるん？」
でも彼らを買っているのは事実。彼らとレースをして楽しいのも事実。……愛ではない。
「じゃあここは翔ちゃんを利用しましょう。今の親子関係なら大丈夫でしょう。なんなら俺も参加してもいいですよ。俺が話通しておきますから」
和也はさりげなく良い案を出してくれるから重宝する。和也の進言で馬が良くなったなんて話も聞くしな。
「悪いな。お願いしてもいいか？」
「お安い御用です」
今回は和也に任せることにした。俺は下手に回るから大胆に動けないし。
和也に任せたら話がトントン拍子に進みお会いする機会を得た。レース後かなとなんとなく思っていたらなんと月曜の午後、櫻井HDの系列のホテルでお会いすることになった。
和也とスーツに身を包んで東京駅からタクシーでホテルに向かう。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2021年1月27日 9時
