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そのおかげで初騎乗初勝利は逃したもののその日に初勝利、次の日にも勝利を挙げた。
それで注目度はさらにアップ。
確か和也は中山で乗ってて俺は阪神であいつのレースを見てたと思う。
そのときの和也をどう見てたかって話になるけどフォームはまだまだ新人っぽさがあったけど新人にしては上手いなという印象だった。
そこはやっぱ天性のモノなんだろうね。
騎手になった和也と初めて会ったのは次の週の日曜日。
俺はそのとき弥生賞に騎乗するから中山に来てた。
「武岡さん」
さすがにその頃には呼び方が変わってた。
新人の頃のあいつはまだ可愛げがあった。
「どうやデビューしてみて」
「競馬って難しくて面白いですね」
「せやろ。お前と乗れるのは楽しみにしてるで」
「俺も一緒に乗れるの楽しみにしてました」
その日は直接対決だなってマスコミは銘打ってくれたけど全部俺が勝ってみせた。
けど競馬っていうのは1着を目指すんだから何ともね。
それから和也は天性と減量を生かして勝ち星を量産していった。
当時俺の持っていた新人最多勝記録には及ばなかったもののその年の新人賞を受賞した。
＊
「こうして和也は華々しくデビューしたわけやけど……あいつには欠けてるものがあった。今も少し欠けてるけど。何やと思うAちゃん？」
「……謙虚さですか？」
「そう。あいつ自分が上手いのを鼻にかけてるところあんねん」
俺も現時点での技術には人並みの自信はあるけど自分よりも凄い人はいるわけで止まっているつもりはない。もっと上手くなりたいと思い続けてる。
でもあいつってそれがあるのかなと時々思うのだ。
「二宮先輩の自信家なところは長所でもあり短所でもあると思ってます」
さすがはAちゃん。ちゃんと見てる。
「Aちゃんはあいつの直属って感じだったから見てきたやろ」
「まあ……。でも先輩は勝ってましたし」
「せやねん。あいつ乗り方は綺麗だし勝ってたし軽く注意するぐらいやったな俺も」
そこは反省点かなと思うけどだからといってあいつがそれを素直に聞くかという話にもなる。
勝つ奴が正しいみたいなところもある世界だから。
「あの落馬って何年前やっけ」
「3年前だと思います」
「そっか……」
＊
かくして和也は勝ち星を積み重ねていった。G1もいくつか勝っていった。
キャリアを重ねるごとにあいつは天狗になっていった。色々派手だった。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
