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「和也。久しぶり。元気にしてたか？」
「うん」
やっぱりこの頃の和也は可愛かったなと思い返す。今はほんとに。それはいいとして。
和也がここに来たということは。それでもなおなのかと思った。
目線を和也に合わせる。そして少し声を小さくして話す。
「和也競馬は好きか？」
彼は首を縦に振る。
「騎手になりたいのか？」
「うん」
和也はニコッと笑った。
ご家族は反対するだろうと思った。二宮さんのことがどうしてもあるから。和也もなんてことにもなりかねない。
だけど俺はこの純粋な瞳を曇らせてはいけないと思った。二宮さんがもし生きていたら精一杯応援するだろうなと想像できる。
だから俺はまたこいつの頭を撫でた。
「応援するで、俺は。それで一緒に乗ろう」
「はい」
それでお前がデビューしたときには二宮さんがしてくれたことを俺がするから。
まだ小学生のあいつに俺はそう誓った。
＊
「かっこいいですね」
「そう？」
ここはとある京都のホテルのラウンジ。
向かいの席にはAちゃん。
ゴッドオブウインで挑んだ今年の凱旋門賞を回顧するという取材の名目のはずがなぜか和也のことを話している。
そうそうAちゃんが何で俺が和也を気にかけてるのかと訊いたからだ。それに俺は気にかけてるのは5人とAちゃんだと答えた。
だから以上のように話してしまったのだ。
今日は時間があるから平気だけど。
「かっこいいですよ。誰かにしてもらったことを別の誰かにするなんてなかなか。武岡さんがある種先輩とお父様を繋いでいるのも」
「そうかな」
当然の行為をこう絶賛されるとどうもピンとこない。
「というか和也が中心になったな」
「それだけ二宮先輩との時間が濃いってことですよ」
「せやな」
「じゃあジョッキーになってからの先輩はどう見ていらっしゃったんですか？」
「あいつはな……」
Aちゃんの口車に乗せられて話してしまう。
けどこういうのも悪くはない。
＊
あいつがデビューしたのは15年前になる。
あの二宮さんのご子息ということでその期の中では断トツの注目度だった。
その影響は確実にあり、所属となった松本先生のバックアップもありデビュー週に10鞍以上の乗鞍が用意された。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
