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競馬をより多くの人に分かってもらうには馬やジョッキーだけじゃなくこうして伝えられる人が不可欠だ。
Aちゃんの文章を見てこういう人がいるんだ、この人はこういう人なんだと気付いてもらえたらまた一つ理解が増えるんだと思う。
だからジョッキーはああいう媒体に出るに越したことがない。
協力的でありたいなと常に思ってる。
「これで武岡さんの回顧録は終わったってことになりますね」
「せやな」
「いかがでしたか？」
「面白かったで。昔があったから今があるんやなって改めて思った。和也や相葉くんは小さな時から見てるから余計に思うところがあった。まあこれからもよろしくということで」
「よろしくお願いします。そのうち今日いない人たちも含めてご飯食べましょうよ」
「良いね。でもその面子だと俺が奢る形になるな」
「翔ちゃんに払わせましょう。あの人の方が所得凄いし」
「賞金の8割やもんな」
最近じゃ自分より2回り以上下の後輩も出てきた。
意固地なおっさんにならんように下の世代との関わりが大事になってくる。
だから彼らと会って話すことは決して面倒ではないんだよ。
彼らからは競馬が好きという気持ちが伝わるし。
じゃあ今度は7人で集まろうということで解散した。
一人で帰れるのに和也が助手席に乗ってきた。
「何やお前Aちゃんと帰るんやないのか」
「俺武岡さんと一対一で話したかったんですよ」
「いつも話してるやないか」
「そうじゃなくて。今回のことを踏まえてですよ」
しょうがないからエンジンをかけて車を発進させた。
多分こいつのことだ。
どこか適当なところで降ろしてくれと言うはず。
「で、何を話したいんや。Aちゃんのことか？」
「違いますよ」
そして和也はいつも競馬のときにする笑みを見せた。
「武岡さんも俺たちのこと言えないなって思ったんです」
「…………」
俺はどう返したらいいか分からなくて黙ってしまった。
車のエンジン音が響く。
「どういう意味？」
「そのまんまですよ。光が強ければ強いほどその影は濃くなるんですよ」
またどう返したらいいか分からなくなった。
「武岡さんって墓場まで持っていくこと多そうですね」
「それにはイエスともノーとも言えへんわ」
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
