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Aちゃんとは和也を通じて話すようになり次第には介さなくても話すようになった。
こちらが声をかけるだけじゃなく向こうからも声をかけてくれるので助かった。
大人しいけど物怖じはしない性格は今でも生かされてるんじゃないかな。
Aちゃんは彼女なりに勝ち星を積んでいって3年目にはそれまでの女性騎手の中での最多勝記録を超えた。
重賞には縁が遠かったものの1年で平均10勝以上を挙げていたが5年目の秋―――。
たまたま同じレースに乗っていた。
俺は後方待機をしていてAちゃんは先行集団にいた。
事故が起こったのは4コーナーに差しかかろうとしたときだった。
Aちゃんの乗っている馬の左前脚が折れたのが分かった。
俺は咄嗟に外に馬を回避させてく。
馬の故障が引き金となって数頭の馬が競走中止になる姿を目の端で確認しながら俺は馬を追っていた。
レースを終えて救護室を覗こうと思ったらそのレースに乗ってなかった和也の姿を確認した。
「Aちゃんが心配か？」
「当たり前でしょ」
大体他人を小馬鹿にしている和也の動じている姿は面白く映った。
パトロールビデオでさっきのシーンを見る。
5頭の落馬が確認できた。
「武岡さん避けるの上手いっすね」
「自分が巻き込まれないように後続を巻き込まないようにするためや」
救護室から騎手が出てくる。
軽傷で済んだジョッキーが言うのは皆意識があるらしくひとまずホッとした。
意識がないというのは嫌だからね。
和也の後について行くように救護室に入る。
Aちゃんともう一人の騎手は骨折をしてしまったようだ。
彼女は左腕に添え木をしていた。
「左腕か？」
「はい。今から病院に行って詳しく見てもらいます」
「そうしてもらい。焦らずにゆっくり治しておいで」
「じゃあな」
また和也について行くように救護室を出た。
「不幸中の幸いやな」
「そうですね。見ててもなかなかの落馬でしたから」
和也は分かりやすく彼女を心配していた。
それがまた面白かった。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
