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「いやだって武岡さんとそんなに話すわけじゃないし。ニノはいつも武岡さんと一緒にいるけど」
「俺からしたらこの人は親しくさせてもらってる関西のおっさんだわ」
「俺からしたらお前は小生意気な後輩だわ。こんぐらいのときは可愛かったんやけどなあ」
売り言葉に買い言葉。
こいつといると方向性が狂う。
「お二人面白いですよね」
いつの間にかAちゃんは松本くんの代わりにお茶を用意していた。
「松本さんに好きに使っていいと言われたので好きに使いました」
「ありがとう。……そんなに面白いか？」
自分では甚だ疑問なのだが相葉くんは笑ってたしいいか。
「面白いですよ。先輩のそんな調子はなかなか見ないですし武岡さんはレアですよ」
「俺はいつもこんな感じや。せやから相葉くんも気張らずに俺のことをただの関西のおっさんって見てええで。……で、今回インタビュアーは和也？」
「正解。じゃあ始めますよ」
＊
Aちゃんは競馬学校に入学したときから話題になってた。
数年ぶりの女子の騎手候補生。
ルックスも相まって注目されていた。
Aちゃんと初めてコンタクトを取ったのは和也を介してだった。
彼女が厩舎実習をしていたときだ。
「武岡さん。この子が太田A。こいつの師匠と松本先生が同郷で仲が良いからって色々教えてやるように頼まれてるの。今は俺のバレットをやらしてる」
「……初めまして」
「初めまして」
大人しそうな可愛らしい子だなというのが第一印象。
この時点だと騎手としてどうなるかは分からなかった。
「こいつがデビューした時には一つよろしくお願いします」
「楽しみにしてるよ」
「ありがとうございます」
「じゃあA。俺の後半の鞍用意して」
「はい」
おや？とこのとき思った。
和也は人との付き合いが狭くて深かった。
だから親しくしてる人は限られる。
なのでAちゃんがすでにそこに入ってるように見えて驚いた。
これが初めて会ったときに思ったことだ。
＊
「既にそう思ってたんですか？」
「思ってたで。だって和也普段付き合いのある人間頭に浮かんでみ？当時の。4人と俺は抜いてな。あと同期もな」
「…………」
「そうだよね。ニノ仲の良いジョッキー少ないもんね」
相葉くんの無慈悲な感じに軽く吹いた。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
