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「大野さんの親父さん多弁ではないけど温かいんですよね」
「そうなんだよ」
「そこは大野さんに似てますね。顔はお袋さん似かなと思うんですが」
「松本くんの周りは優しい人がいっぱいいるね。大野くん然り相葉くん然り」
「5人の中じゃ一番年下なんで、調教師が」
やっぱり感じる自己肯定力の低さ。
それはともかく。
「武岡さんから見た大野さんはいかがですか？」
「人伝から聞いたのとAちゃんの記事でしか判断が出来ないけど職人って感じがする。蹄の薄いアカシを走らせてるのは彼の力が大きいよね。チームアカシの足元を支えてるのかな」
話を見聞きしていると彼はお父さんに似て温かいんだなと感じる。
これは他の人たちにも言えるんだけど。
「チームアカシは皆素晴らしいね。ゴッドオブウインの鞍上として手強いなといつも思ってる」
「いやいや所々で武岡さんとゴッドオブウインに負けてますし」
「でもここ一番でアカシと君たちに負けてるんだよな」
ダービー、有馬、宝塚、凱旋門……勝ちたい気持ちが強くなるレースで和也に上手く乗られる印象はやっぱり強い。
このままだと謙遜のし合いで終わるからまとめへと舵を切る。
するとAちゃんが言った。
「競馬ってブラッドスポーツと言いますけど今回武岡さんのお話を聴いて、それは馬だけでなく人にもあてはまりますよね。もちろん私のように一般家庭からこの世界に飛び込む人もいますけど」
「俺は曽祖父の代から競馬に携わってるもんなあ。松本家はどうだっけ？」
「松本家は祖父の時代からですね。戦時中の話を親父から聞いたことがあります」
「櫻井くんはお父さんが馬主だから彼も馬主になって。和也は二宮さんからだけど二宮さんは南相馬市出身だよね。相馬野馬追で有名な」
「相葉家は戦前サラブレッドの生産に関わっていたようですし大野家は青森で競馬に関わっていたみたいですよ」
「DNAやなあ。Aちゃんはお父さんが競馬ファンだったよね？そういう意味では」
「競馬が好きというDNAは刻まれていますね」
こうして振り返ってみれば彼らのお父さんの代から競馬に乗っているわけで長いことやってるなと感慨にふける。
これからも競馬に乗りながら彼らの物語を見ておきたいなという思いが湧く。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
