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「雅紀くん見てていかがですか？」
「思えばあいつ性格的にジョッキーに向いてなかったわ。何年経ってもピュアだし一途だし。あいつは裏方に向いてるよ。豊和もあいつの馬でG1目指してくれ」
「和也がいるやないですか」
「それでもだよ。雅紀と豊和がいる口取りを見たいね」
＊
「聞いたことない話でした」
松本くんの第一声はそれだった。
「相葉くんの親父さん優しいですよね」
「うん。今でも注目して見てくれてるみたいで関東行くときにお会いするとあの騎乗良かったなって言ってくれるし」
そんな優しさをもらったから優しさで還元しようと日々思ってる。
「相葉さんフランスで頑張ってましたね。慣れない土地で大変でしたでしょうに」
「フランスは初だったの？」
「そうですね。父の時に香港やドバイに行ったことはありましたけどヨーロッパは初でした」
「小谷厩舎だったから良かったね」
「小谷先生には感謝してます。そして相葉くんにも。アカシを毎日調整していったのは彼ですから。もちろんカズにも」
海外に馬を持っていくとき調教師がずっと付き添ってるわけじゃないからよりスタッフの腕が要になってくる。
だからアカシが凱旋門2着となったのは彼の腕によるものも大きいと思う。
「相葉くんにはいつも助けてもらってます。スタッフの中には俺より年上の方がもちろんいてその方たちは当然俺のレッテルを知っています。やりにくさはあるんですけどそこを円滑にしてくれるのが相葉くんなんです。彼の指示だったら上手くいって……厩舎にはなくてはならない存在です」
「そこはお父さん譲りやね。誰も相葉さんのことは悪く言わへん。昔俺が話しかけにくかったベテランも相葉さんの前じゃ気さくだった。……懐かしいね」
二宮さんがいた頃、その後今では自分より年上の騎手が数えられるぐらいになったからこそあの頃が余計懐かしく思うのかもしれない。
「懐かしいですね。子供の時に見た競馬って覚えてますよね。カズのお父さんのレースとかそこ抜け出してくるのって今でも驚きますもん」
「俺も子供の頃に見た親父のレース覚えてるわ。でも好きだったのは親父が乗ってなかった馬やったな」
また話が脱線する。
これはAちゃんの取材だと思い直さないとついつい脱線してしまう。
Aちゃんが水を向けてくれる。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
