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性格だけじゃない。相葉さんの騎乗技術も勉強になった。
例えば折り合いを欠かせる所を見たことがなかった。そして綺麗な騎乗フォームで馬が伸び伸びと走っていた。
秀逸だったのはオークスでの勝利だ。気性難で知られていた馬と華麗に折り合わせて圧勝させた。
牝馬クラシックや牝馬との勝利が多いから牝馬の相葉って言われていた。
相葉くんのことはまあまあ聞いていた。
競馬場にも来ていたしね。
「次男はあまり競馬に興味がない感じなんだけど雅紀は将来騎手になりたいみたいでさ、それまでは俺も騎手を続けていたいな」
そうやってはにかみながら言っていた記憶がある。
だけど彼が中学生になったとき。
「雅紀の奴、身長が大きくなったから騎手になるのをやめて厩務員を目指すんだと」
「ゆくゆくは調教師ですか？」
「いや、潤くんが調教師を目指すから自分はそれを支えたいって言ってた」
「へえ」
騎手になることしか考えてなかった自分がそう思うのは何だがその頃に将来を決められるのは立派だなと感心した。
年を取ると無駄な知識ばっかり増やしちゃってやりたいことがあっても尻込みしちゃうから若いうちに決めちゃえばその分アドバンテージはあるはずだから。
でも相葉さんは息子さんと競演したかったのだろう。
明らかに元気がなくなっていた。
「俺、引退するわ」
またあるとき相葉さんはこう言った。
「そう、ですか……」
「あいつが死んでからモチベーションは薄くなってた。でも雅紀と一緒に乗りたくてなんとか乗ってきた。でもそれも終わった。弟弟子から助手にならないかって言われたし潮時だ。今週終わったら免許を返上する」
そう告白されたとき俺はどんな顔をしてたんだろう。
何も反応できなかったというのが正解か。
「……お疲れ様でした」
「お前はずっと頑張れよ。お前は唯一無二の競馬界のスターだからな」
相葉さんは俺の左肩に手をやった。
こうして相葉さんは引退した。
また俺は偉大な騎手の引退を見送った。
それから10年以上経って俺は競馬場で相葉くんの姿を見た。
聞くところによるとなかなか腕利きらしいことを知った。
競馬場で相葉さんがいたので訊いてみた。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
