とある人の視点４ ページ31
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スケジュールに調整をつけて静かな時間に俺は美浦トレセンにやって来た。
通用門まで車で行くとAちゃんが待っているのが見えた。
俺の車に気付いたらしく俺は手招きする。後部座席を手で差すと乗り込んできた。
「悪いね待たせちゃって」
「いえいえ。ではご案内します」
Aちゃんのナビゲーションで松本厩舎に辿り着いた。
車から下りると松本くんが出てきた。
「武岡さん」
「ごめんね。今日休みなのに」
「いえいえ。僕ここに住んでるんで武岡さんにお越しいただけて嬉しいです。ようこそ松本厩舎へ」
今時厩舎に住む調教師って珍しいなと思った。
独身だからなと思ったところで先日の話が頭に浮かぶ。
認めてもらえていないという現状に少し胸が痛む。
「すみません松本さん場所をお貸しいただいて」
「Aちゃんなら大歓迎。うちの応接間ぐらい。それに武岡さんのお話興味あるし」
厩舎ご覧になりますか？と言われたのでお言葉に甘えて覗く。厩舎に入るとこちらを見る馬もいた。
見慣れない人がいるなんて思われてるかもしれない。
「アカシはまだ放牧中なのですが……」
「ゴッドオブウインもやで。当たり前だけど綺麗にしてるね。下手したら人間より環境良いよね」
明るい木目調の壁、塵一つない床、馬房の中にはクーラーが入っている。
「ここは馬優先主義ですからね。馬たちのためなら惜しみませんよ。その分馬が返してくれますからね」
松本くんの表情から馬が好きなんだなと伝わる。
それでええねん。
「この馬分かるわ。レースで一緒に走ったことある」
「ああホライズンですね。この馬相葉くんの担当でやっとよくなってきたんですよ」
「へえ楽しみやな」
あわよくば乗せてもらえないかと唾をつけとくつもりで話したけど……和也次第だろう。
厩舎を見せてもらって事務所に入った。
戸を開ければすぐ応接間で角に小さなキッチンもある。
「今お茶淹れますんでそこにおかけになって下さい」
靴を脱いでソファに座る。
なかなか年季が入ってるのか軟らかい。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
