To the【ars】 (ページ4)

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とある人の視点ページ4

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俺には昔から気にかかっている男たちがいる。

彼らとの出会いはいつだろうか約一回りぐらい年が離れているから俺がデビューして天才だなんだと騒がれていた頃には知っていたかもしれない。

当時はまだ関東関西の意識が強く関東の人からすれば俺は関西の生意気な若造だった。
そうなってくるとやっぱり風当たりは冷たくて視線は痛かった。
今のご時世だと問題になることもザラだった。

そんな中で温かったのは和也の親父さん、二宮さんだった。
あの人は天才と言われていてG1タイトルをほぼ総なめにするような腕の持ち主だったのに偉そうな素振りを見せずレースのときは感情を見せず、終われば豪快に笑ってた。
その人と仲の良かった大野くん、相葉くんの親父さんも優しかった。

「競馬に東も西も中央も地方も日本も海外も関係ない。狭い島国の日本で東だ西だなんて馬鹿馬鹿しいよ」

その当時にしては随分前衛的な考え方だったのではないかと思う。
競馬学校の頃からアメリカの競馬のビデオを見て海外に憧れていた俺にとっては背中を押してくれる言葉だった。

「豊和はそのまま一生懸命やってればいい。周りは気にするな」

もちろん俺もお前に負けないようにするけどなと二宮さんは俺の肩を痛いぐらい叩いて豪快に笑った。
そういった性格はあいつと似ていないなといつも思う。

平たく言えば憧れの人だった。
デビュー当時の頃はフォームの真似なんかしたもんだ。
あの人のようになりたいというのは同世代の共通認識だったと思う。

「和也がさ大きくなったら俺みたいなジョッキーになりたいって言うんだよ。だったら俺は辞められないし勝ち続けなきゃな」

そう言ってたのを俺はまだあいつに伝えてはいないけど可愛がられてた記憶はあるだろうからまだいいか。
あいつがデビューしたときにはよろしく頼むなという言葉は今も遂行してるつもり。

そう、もうあれは25年前になる。
とある重賞レースで二宮さんは人気馬に乗っていた。良血馬で将来有望な芦毛の馬と記憶している。
俺はそのときたまたま同じレースに乗っていた。

あのときの嫌な感じは今でも忘れられない。
二宮さんはコースの内側にいた。俺はその後方の外側で勝機を狙っていた。

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