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「太田さんここは嫉妬すべきじゃない？」
「何でしょう。嫉妬さえ追いつきません、あの空間」
「いや嫉妬して」
「というかちゃうからな」
どうもこの空間は漫才的な空気になる。面白いのは好きだけどね。
Aちゃんとだけじゃこうはならない。彼女が咳払いをした。
「つまり松本さんを気にかけることによって武岡さん自身救われるところがあったということですね」
「……そういうことやね」
上手にまとめたAちゃん。
話が戻っていく。
「小さいときから見てくれてますね俺たちのこと」
「うん。縁があるんだよ。それが今じゃ立派になって」
「おじさん」
「うるさい。お前もおっさんになるんやで」
「コホン」
またAちゃんが咳払い。
いかんどうも調子狂う。
「うん。松本くんの話やね」
＊
そこから時は流れて松本くんはお父さんのところで調教助手になっていた。
その頃にはもう和也は立派なジョッキーになってたし櫻井RHも立ち上がっていて俺はもう三十路を半ば過ぎてベテランに差しかかる頃だった。
それでも関東に行けば松本厩舎から依頼があって先生にはお世話になっていた。
「武岡さん。お久しぶりです」
彼はこう挨拶してくれたっけ。
「久しぶり。調教助手になったんだってね。将来は調教師になるの？」
「はい。父があと8年で定年なのでそのまま引き継げればと思って今から勉強してます」
「じゃあ調教師試験受けられる年齢からチャレンジするんだ」
「はい。一発合格狙ってます」
昔のイメージが強いから大人しい印象だったが明るくなったように感じられた。
だけど昔の影も感じられた。
「松本潤くん助手になったんですね」
「せやな」
あるとき池山謙太とこんな話をした。
「口さがない連中が好き勝手言ってるんですよね。彼は不義の子だからとか本流じゃないとか中には本当に先生の子供なのかとか言ってるの聞くんですよ」
「ひどい話やな。その当時って謙太小学校低学年の頃とかやろ。そんなことは語り継がれるんだな」
「ホンマですよ。それ何年前の話やん？って思うんですけど」
「……それ父親のコネって言われるやつ」
「それですね」
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
