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「あの子を見てると不憫に思えてさ。先生のしたことは非情だなとは思うけどだからといってナイフをあの子に向けるのは少し違うだろ」
「そうですね。その辺り和也くんがよく分かってるんじゃないですか？」
「ああ。あいつは立派だよ。和也周りの大人たちに大人たちのやったことに潤くんは関係ないでしょって言ったんだよ。我が子ながらませすぎだろ」
その頃から和也のそういうところを感じてた。
「ホンマですね。僕も気に掛けますけど和也くんや雅紀くん智くんもいるから大丈夫ですね」
「だな。子供たちのそういう姿勢は学ぶべきだな」
最初は皆純粋無垢だったはずなのにどう間違えると人は人に悪意のみぶつけるんだろう。
他人ばかり気にせずに自分を見つめればいいのにね。
「こんにちは」
それ以来松本くんを見れば声をかけるようにした。
こうして声をかけてくれる人が多いって知れば彼も変わってくると思ったから。
「こんにちは」
そうすれば可愛い笑顔が返ってくるから。
あの笑顔今も変わらないよね。
「うちの息子を気にかけてくれてありがとう」
松本先生にはこう言われた。
でもただ単に彼のためではなく、もちろん松本先生のためでもない。
なんとなくだけ自分のためという気がしてならなかった。
＊
「どういう意味ですか？」
Aちゃんの真っ直ぐな視線が飛んでくる。
俺もね冷血人間じゃないから。
「俺もねレッテルの粘着が強かった。今どう見えてるか分からんけど子供の頃は大人しくていい子ちゃんだったと自分で思うよ。……なんかまとまんないや」
「珍しいですね、いつも整然と話すのに」
和也が左膝を抱えるようにして座っている。
「この世に生を受けて何十年も人として過ごしてるんだから多かれ少なかれ傷やレッテルはあるでしょ。俺はご存知の通り親父の死は尾を引いてるし翔ちゃんだって只事じゃないしAも例外じゃない。誰もあなたが完璧な冷血人間なんて思っちゃいないですよ」
「……せやな。多かれ少なかれ皆何かを持ってる」
生意気やなと思いつつ和也を見る。
「俺はサイボーグになりきれないあなたが好きですけどね」
「ん？」
「……えっ？」
今この瞬間和也がいて良かったなと思ったけど……ん？
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
