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「子供の頃から馬を見る眼が培われたということでしょうか」
「どうなんやろね。俺も子供のときは馬と暮らしてたみたいなもんやけど相馬眼というのは全然」
もしかしたらと思うんだけど彼の相馬眼は彼の実の母親譲りなのかもしれないと。
そうすれば天性のものというのにも一応の納得がいく。
「今回あいつに何て言ってるの？」
「武岡さんに追加取材と」
「こないだの後、競馬で一緒だったときに和也にねちねち言われてさ。過保護な彼氏を持つと大変やな」
「……確かに奔放だった先輩が私に甘いのはいつも新鮮に驚くんですが」
まあ君たちはお互いを想い合ってるはずだから大丈夫だと思ってるけどね。
「過保護な彼氏といえば櫻井くん結婚するんだってね野々村さんと」
「そうですね。さつきちゃん嬉しそうでした」
「Aちゃん野々村さんといつの間にか仲良くなったの」
「はい。フランス行ってるときに距離を詰められて」
Aちゃんは結構誰とでも仲良くなれる性質で競馬場では俺や和也以外の騎手とも話しているし、他のライターさんや記者さんとも話している。
そこがあいつの心配ポイントだろうが。
「野々村さん気前がええしな。芯もしっかりしてるし。おまけにべっぴんさんやし。櫻井くんにピッタリや」
「私もそう思います」
「……さて話の続きをしますか」
こうして脱線しながらも話を繋いでかなきゃなかなか終わらないからね。
＊
今みたいに親しく話すようになったのは彼が大学生のときか。
その頃にはもう和也は騎手としてデビューしていてあいつを介して会ったんだ。
「武岡さん分かる？馬主の櫻井さんの息子の翔ちゃん」
「分かるで。小学生ぐらいに一緒に口取り撮ったりしてたから。今は大学生？」
「はい。そうです」
「翔ちゃん世界中あちこち回って世界の競馬見てるんですよ」
「へえええやん。将来はお父さんの跡を継いで馬主になるの？」
「父は何も言ってないですけどなりたいですね。それでカズを乗せて勝ちたいです」
「そこは俺を乗せてやないんやな」
「あっいえ武岡さんとも勝ちたいです」
その目はキラキラと輝いていた。だけど小さいときに見た印象は抜けなかった。
影があり彼のコアな部分をつついたら闇が溢れそうな、そんな感じ。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
