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「レース後二宮先輩とお話しされましたか」
「ああ。あいつまた分かりやすく落ち込んでてそそくさと帰ろうとしてたから一方的に言ってやった」
「……武岡さん普段お優しいですけどそういうとき怖いんですよね」
「俺Aちゃんに何か言うたことあったっけ」
「私はなかったですけど同期が武岡さんの進路を妨害したときに目撃しました」
「でも俺はそのとき言うことはあってもそれでお終いやから。むしろ君の同期の将大の方がいつも厳しくてあんなに怒れるなって感心するわ」
「まあ川崎くんはいつも誰かしらに怒ってますけど。……それはさておき。だから二宮先輩はショックを受けたままだったんですね。私がその後日取材をしたら先輩が冴えなくて」
あのときなんて言ったかなと思い返す。
要はお前がアカンかったからアカシが負けたんだってことを伝えた。あと過去にこだわるなと。
「一番最初の疑問に戻りますけどなぜそこまで先輩を……」
「ただ単純に買ってるからやね、あいつを。和也は良い騎手だからこのまま腐ってほしくなかった。一緒のレースに乗るんやったら良い和也と乗りたい。それで俺が勝ちたい。ただそれだけのことやで」
俺の根本はずっと上手くなりたい、もっと良い騎手になりたい。
だから強い馬に乗り続けて凄く上手いジョッキー達と一緒に乗り続けたい。
そうやってデビューからやってきた。だから技術向上を求める後輩には全て手の内は明かさなくても話すし海外に行きたいと言う奴は応援する。
それを和也にも実践しただけのこと。他の奴らとも以下同文だ。
「それで和也はどうしてダービー勝つまで復活したん？櫻井くんたち？それともAちゃん？」
こう言うとAちゃんは表情を変えた。
やっぱりAちゃんか。
「その皐月賞の後に先輩を取材したんです。取材と言いますか、一個人の太田Aとして二宮先輩に言いたいことがあったのでつい色々言ってしまいました。そしたら先輩の目つきが変わってダービー勝つから見てろよっておっしゃいまして」
「かっこつけちゃって」
でもあいつらしいなとも思う。あいつは有言実行の男だから。
それで実際勝っちゃうんだから勘弁してほしい。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年7月16日 10時
