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残り250メートル。負けたくないという気持ちは多分アカシも一緒だ。
外からジワジワとゴッドオブウインを捕らえようとする。もうがむしゃらだ。
追って追って叩く。追って追って叩く。
俺はアカシと勝ちたいんだよ。
でもそれは武岡さんとゴッドオブウインも一緒。
この人から火が見える。
あと150。もう他馬の気配は感じない。マッチレース。
叩き合いでどちらも譲らない。いや譲れない。
しかし残り100メートル。アカシがグイッと伸びてくれる。
俺は懸命に腕を伸ばした。
そこがゴールだった。
着差はアタマ差。
俺はカメラに向けてガッツポーズをした。
＊
ゴール後は人馬とも疲れた感じがして1コーナー辺りからゆっくり帰っていく。
「おめでとう」
武岡さんだった。
「ありがとうございます。良いレースでしたね」
「ああ。良いレース出来たな」
「ゴッドオブウインは凱旋門ですか？」
「馬に問題なければな。アカシは？」
「これでうちの翔ちゃんは行くって言ってくれるでしょ」
「またお前と走ることになりそうやな」
「そのときはよろしくお願いします」
「なんか二人でかっこ良くまとめちゃってますね」
「まああの二人は間違いなく世界でイケるやろ」
後方で池山さんと福沢さんが喋ってる。
「カズナリとトヨカズさんうらやましい」
「ボクも凱旋門行きたいヨ」
前方ではクレールとミカル。
「そういえば和也さんこの後しばらくフランスですか」
「松本厩舎の馬に営業かけてみよう」
通り過ぎていく川崎と田渕。
レースでは真剣に競ってる人たちだがレースが終われば気の置けない人たち。競馬って良いなあと思う。
この人たちとしばらく会えないのは少し寂しい。
検量室前に帰ってくれば相葉さんがまずは大喜び。
後検量を終えて外に出ると翔ちゃん潤くんAが来てくれて喜んでくれる。
そして翔ちゃんが俺の肩に手をポンとやった。
「カズ、凱旋門へ行くぞ」
「そうこなくっちゃ」
これにてアカシの凱旋門賞行きが正式に決まった。
アカシと宝塚を勝てて凱旋門へ行けるのも嬉しいが、何より嬉しそうな顔をした翔ちゃんを見るのが久々な気がして、それが嬉しかった。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年1月22日 9時
