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新聞をガサッと広げる。天皇賞はかれこれ1937年から行われている、その前身とされるレースまで遡ると1905年まで行きつくんだからどれだけ長い歴史と伝統があるのか窺い知れるだろう。
春の天皇賞は淀の3200メートルで行われるここでしか使われない距離だ。時折距離短縮論が出るほど最近長距離レースの需要がなくなっているようだが長距離だからこそ面白いレースがあるというのに。
短距離だろうが長距離だろうが競馬は競馬だから好き嫌いはないが乗っている間に出来ることがあるのは長距離だ。
「お前って新聞に何も書かへんよな」
そう言って隣に来たのは福沢さん。
「福沢さんは色々書きますよね」
それぞれタイプがあると思う。熱心に競馬新聞を読んで研究する人や感覚だけで乗っちゃう人。俺はハーフハーフかな。
「アカシ人気やな」
「そうですね」
「ぶっちゃけ距離適性どうなん？」
「距離ですか？」
「血統的に。父タニノギムレット、母父ネオユニヴァース、母系も中距離がベストって感じやろ」
「……考えたことないですね。強かったら才能が適性を上回るなんて容易です。オペラテラスもそうでしょ？父はステイゴールド、母系もステイヤー、だけど秋天でも上位に来れる。そういうことですよ」
こう返すと福沢さんは悔しそうにする。
「お前は一言われたら十返すよな」
「これは生まれつきなんで仕方がないですね」
「ゴッドオブウインはどこにおるんやろな」
ポツリと言う。確かに俺もそこが分からなかった。
「ゲート出たなりじゃないですか？俺もそうですけど」
「まあ俺もやけど」
そんなことを思い出しながら周りを見る。
春の天皇賞のスタートは向正面から。俺の目線の先にはスタンド。GWもあり今日も多くのファンが来ている。ありがたいことだ。彼らが賭けた金が俺たちの金になるんだから。
俺は視線をライバルたちに移す。ゴッドオブウイン、オペラテラス、イエローマイン。武岡さん、福沢さん、田渕。どの馬も人も強力だが凱旋門を目指すためにはここで怖気づいちゃいけない。
しかし嫌なのは外枠。7枠というのは皐月賞、菊花賞でのイメージが強い。中間は時折ゲート練習をしていたが今日出遅れないとは限らない。今回はどんな競馬をしようか。そんなことを考えたらスターターが台に上がっていく。
次にゲート入り。アカシは7枠13番のゲートに入る。この馬は本当に大人しい。
ゲートが開いた。アカシは普通に出てくれた。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年1月22日 9時
