５４ Side Masaki ページ13
「相葉さんおはよう」
あくびを噛み殺しながらニノが厩舎に来た。
「ニノおはよう」
「毎度のように相葉さんが調教パートナーね」
「うん。俺がDWコースでサマースプラッシュに乗って先行。その後をアカシが追って先着が良いって松潤が」
「了解」
1週前からニノが追い切りで乗るのが通例になっていた。今日は春天の1週前追い切り。今週はG1がなく重賞にも大注目という馬はいないからアカシにカメラが集中するだろう。
ニノはアカシに乗って、俺はサマースプラッシュに跨る。そこからコースに出る。スタンドから多くの人が見ていると感じた。
そこからはルーティン通り。俺とサマースプラッシュが先行し、残り200メートルでニノとアカシは抜いていく。乗ってても他の馬から見てても惚れ惚れするような馬だ。俺がこうしてアカシの調整に味を加えられることが嬉しいし、それだけ調整は至って順調だった。
午前の作業が終わったので俺は応接間でだらける。大ちゃんもだらけてニノもだらけてる。そこに松潤がご飯を持ってきてくれた。和風スパゲッティとピザだ。
今年に入り松潤は俺たちに料理を振る舞うようになった。他の厩舎スタッフにもごちそうするようになった。食事を一緒にすることでコミュニケーションをより図れるようになって良いと思う。きっと若葉と美桜ちゃんにも作ってるな。松潤は元々自炊するタイプだし。俺も中華系だったらイケる。
また応接間には4人。翔ちゃんトレセンで最近見ない。あれだけ現場主義な人なのに。
「翔くんにも食べさせたいんだけどな」
フォークでパスタを巻きながら松潤。
野々村ちゃんからあんな話を聞いて以来翔ちゃんが気にかかっていた。競馬場で会えたら良いんだけど俺には調教師の助手という仕事もあるから翔ちゃんとは別の競馬場で臨場してると会えない。
「野々村ちゃんから言伝誰かもらった？」
皆首を横に振る。
「特に何もないんでしょ。悪い意味で平行線」
「翔くんの顔見てない寂しい」
「あなた翔ちゃんの顔好きよね」
「好き」
大ちゃんの隣に翔ちゃんがいないのは確かに違和感だ。
「春天終わってからかな」
「かな」
「だね」
「うん」
翔ちゃんが心配だけど自分たちに何が出来るか。とりあえず今は春天を勝って翔ちゃんを笑顔にさせたい。その思いを抱えながら松潤のパスタを食べていたと思う。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2020年1月22日 9時
