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俺が戸を引くと既に二人がそこにいた。
「智くん」
「ごめん、待たせて。Aはもう少しで来ると思うから」
「お久しぶりです。どうぞこちらに」
「ありがとう」
座布団に座ると美男美女が目の前に。
「久しぶり飯塚ちゃん」
「本当にお久しぶりです。大野先生」
「4年ぶりか。大人っぽくなったね」
「ありがとうございます」
飯塚ちゃんは綺麗に笑った。
8月の終わり、ようやく予定が合って約束を果たすことが出来た。
飯塚ちゃんとは実に4年ぶりの再会となった。
「忙しいんじゃないの相変わらず」
「今月は映画の撮影があったんですけど山場は越えたのでこうしてご飯に行けました」
「俺も実は少し久しぶりで」
「へえ。10月からドラマやるって見たよ」
「はい。同じ事務所の後輩の子と一緒にやるんですけど。同じクールでAさんも主演ですよね」
「そうそう。今は撮影の谷間で」
「じゃあこれは奇跡的だ」
「ですね」
翔くんの方を見て笑う飯塚ちゃん。見つめ返す翔くん。
絵になる二人だ。
4年という空白があったからこそ今の二人の雰囲気があるのだろう。
素直に向き合うことの大切さを思い知る。
「良かったね飯塚ちゃん、また翔くんと出逢えて」
「……はい、そうですね。偶然また逢えてこうして隣にいられることが嬉しいです」
飯塚ちゃんは明るくなったけれども翔くんへの気持ちはずっと変わらなかったんだなと感じる。
「翔くんをよろしくね」
「はい」
彼女はニッコリと笑った。
その瞬間は雪乃と錯覚するけど、翔くんは飯塚ちゃんを飯塚ちゃんとして認識してるんだろうなと思う。
じゃないと付き合うまで至ってない。
「にしても変わったな、飯塚ちゃん。愛想良くなった？」
「意識改革したんです、一応。芸能界を生き抜くにはと思って」
あの頃は自分の殻に閉じこもっていたからね。
これも翔くんがいたから？
「翔くんは果報者だね。こんな可愛い彼女がいて」
「それは本当にそう思う」
「いえいえ、私こそ櫻井先生の傍にいられるなんて」
「まだ先生呼びなの？」
「ずっと先生だったので……」
「名前で呼べばいいのに、せっかく」
「ねえ。俺は葉月って呼んでるのに」
翔くんの彼女としての彼女で遊んでいると。
「久々に見たわ。翔のその感じ」
Aがついにやって来た。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2019年6月2日 10時
