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「翔と葉月ちゃんもこういうふうに出かけたわけでしょ？バレなかったのかな？」
「飯塚ちゃんって今でもミステリアスな部分があるし」
「あー一般人と同じ世界にいるわけないって感じね」
「そうそう。だから帽子やら眼鏡やらでバレないんじゃない？」
「もし翔とのことがバレたら一般男性と、ってなるのか」
「飯塚葉月と付き合える一般男性ってってなりそう」
「実際一上司だけどね」
話題は翔くんと飯塚ちゃん。
実は二人で会うときはいつもそうだ。
あとは本当に他愛のない話。
自分たちの話は自然と避けてる。何でだろう。
クラゲの水槽の前に立つ。
プカプカと浮かぶクラゲ。
こんなふうに過ごせたら、なんて思ったりする。
「智は次生まれ変わるとしたら別の生き物がいい？」
「人間以外もやってみたいよ」
「私はやだな。人間が良い。人間だから私は女優をやれてるんだもん」
Aは雪乃のために芸能界を生きてるのは確かだ。
でもその前に女優という仕事に誇りを持っている。
だからこそ雪乃が死んでも挫けずにやってこれたと言えよう。
その姿勢はかっこいい。
でも彼女を守りたいと思う。変なの。
水族館を出る。
Aがいるということはバレなさそうだ。
「昼食うか。腹減ってる？」
「減ってる減ってる。何？お昼も考えてくれてるの」
「うん、翔くんに聞いて」
「だと思った。三人で行くところはいつも私か翔だもんね」
ここで俺は二人で出かけたことがあまりにも少ないことに気付く。
いつも会うのはAの家。
ご飯を食べるときは翔くんも交える。
二人で外食をすることもあるが頻度は稀だ。ましてやこうして出かけるなんて。
それこそ高校のときにAの買い物に付き合ったぐらいだ。
ああ何やってたんだろう。
後悔ばかりが押し寄せる。
翔くんが教えてくれた店は海鮮丼が美味しいところだった。
スレンダーなのによく食べるAは刺身7点盛りをペロリと平らげた。
俺は5点盛りをいただいた。
「この後どうすんの？」
「Aは運転してくれればいいよ」
「ふーん」
俺は最終目的地の住所をカーナビに入れる。
Aはそれを見てピンと来たようだ。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2019年6月2日 10時
