月水晶５【S.S】 (ページ8)

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あんなに会いたかった人なのにいざ会ってみると私はためらってしまう。
要は怖いのだ。
一度傷を知ってるだけに。
「教師」と「生徒」ではなくなってしまっただけに。

4年前の自分は勇気があったというか無鉄砲だったと過去の自分を遠い目で見る。
自分しか見えてなくて突っ走っていた。

でも今は分かっているつもりだ。
先生は今までの自分を殺して教師をやっている覚悟がある。
大切な人を失った過去がある。
そんな十字架と私の想い、比べるまでもないだろう。

でも二人はそんなこと知らないから誘えよと言う。
そんな簡単じゃない。

「二人はどうなの？他人のこと構ってる暇ないんじゃない？」

「Aに心配されたくない」

「以下同文」

二人にいじめられる。

「というかさ、お前前の人と付き合ってる時大して楽しくなさそうだったじゃん。やっぱ先生なんじゃないの？」

なるほど、二宮くんからはそう見えていたのか。

「俺はその先生とちょっとしか会ったことないけど、そのときのAの顔ったら」

「俺それ毎日見てたからね」

「ご苦労だったね、ニノ」

「もっと労って潤くん」

なんかコント風な会話を尻目に私は酒を飲む。

自分で自分を八方塞がりにしているのは分かっている。
だけどそこを打破する勇気が出ない。

ただでさえ泳ぎやすい関係をどうにかしようにも出来ないのは私が弱いから。
あのときの傷や悲しみが深いから。

考えれば考えるほどドツボにはまり、酒は深くなる。

私は酒に強く、それで二人に迷惑はかけていないので、ちゃんと家には帰れたが、翌日は気だるかった。

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