１６２ Side S ページ22
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気付いたら4年の歳月が経っていた。
彼女の活躍は主にテレビで見ていた。
時間があれば映画も見に行ってた。
まるで「飯塚A」のファンだ。
そうだ、彼女は作品上で最も輝くんだから。
彼女を見る度に会いたいと思った。
自分から突き放したくせに。
陽南乃はちょくちょく彼女に会っていたが、陽南乃を通して会うのは思っていたし、向こうも何も言わなかった。
彼女が学校にいなくても教師として頑張ってきたと思う。
困っている生徒がいれば手を差し伸べて、優秀な生徒にはそのままでいられるようにしてきた。
だってそうじゃないと女優を頑張ってる彼女に失礼だと思ったから。
彼女の傍にいたい、だけどたとえいられなくても生きていけるように。
そんな日々を過ごしていたある日。
運命の日だった。
その日は金曜日だったから、夜に智くんと飲んでいた。
居酒屋には彼女がやっているビールのCMのポスターが。
酒のCMをやるような年齢になったんだなと馬鹿みたいに思った。
当たり前だ、俺が今年３１なんだから彼女は２３だ。
そのポスターを見て見ぬフリしていたら、智くんが突然。
「もういいんじゃない？」
「何……が……」
だから俺はこんな声しか出せなかった。
「翔くん。もう自分で自分を殺すのはやめよう。俺、傷つく翔くんをもう見たくない」
「何言ってんの……」
彼女のポスターが視界に入る。
「今でも彼女のこと好きなんでしょ？」
「…………」
度々彼に彼女のことが好きなのか尋ねられた。
だけど俺はそれをはぐらかしてきた。
「翔くん」
智くんの目は俺の心を見るかのようでそらしたくなる。
「翔くんは大事な人を二度と失いたくないと思ってるだろうけど、そう思える人がいるってことだけでも進歩だと思う。だからそれで苦しまなくていいんだよ」
彼の声は優しかった。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2018年10月17日 9時
