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次に目指したのはとても広い海浜公園。
海に花畑にテーマパークと盛り沢山の施設だ。丘を利用しているという。
まずは入り口から海へと下りていく。
「飯塚」
ほらと手を差し伸べられる。
「えっ？」
私は櫻井先生とその手を交互に見てしまう。
「手」
「……手」
「もう」
そう言って先生は自分の手と私の手を握らせる。
「行こうか」
「……はい」
手を握られながら先生と歩いていく。
こうして先生の手を握るのは初めてだと思う。
それ以上のことはしてるのにと変な気持ちになる。
雲一つのない青空の下を先生と手を繋いで歩く。
なんだかいけないことをしている気分になるのは高校生の名残だろうか。
「暑いな」
「夏ですから」
「まあそうだよな。大丈夫？」
「はい」
途中で水を買い、海に出るまで10分以上かかった。
遊泳禁止となっている海は平日も重なって人は少ない。
夏休み中であろう小さい子供が海辺でピチャピチャと遊んでいるぐらいだ。
黒い砂の上にしゃがんで海を見る。
「ここの砂って黒いんですね。確か江の島もそうでしたっけ」
先生も隣でしゃがむ。
「ああ。青い海白い砂浜だけじゃないんだよな」
海は太陽に反射してキラキラしている。
横の先生の目もキラキラとしていた。
潮風に髪が揺れる。
何で私は今この人の隣にいれるんだろう。
先生はどういうつもりで私を誘ったのだろう。
ねえ先生、私はずっと先生の傍にいたいんです。
駄目ですか？
「ん？」
そんな私の目線に気づいてか優しげな視線を向けられる。
「何でもないです」
でもいくじなしの私は何も言えない。
「教師」と「生徒」の枠がなくなったあのときを思い出す。
私たちの関係は今何だろう。
どうなるのが正解なのだろう。
しばらく私たちはただ海を見ていた。
何も喋らなくても気まずさがないのは先生だけだ。
前の人には何かをしなければいけないと常に思っていた。
惚れられた弱みで何かを返さなければと。
でも先生からは何もいらない。
だから私も欲さない。
ただ隣にいてさえくれればいい。
そう思っていたからこそあのときはショックだったんだ。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2018年10月17日 9時
