サクラ・サクラ【Ｓ.Ｓ】 (ページ10)

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作業が中盤に入ったときに再び先生が口を開く。

「Aさんはモテるね」

私は手が止まる。

「見られてましたか、告られているところ」

「たまたまね。……いつもああやって断ってるの？」

「……ハイ。いちいち律義に断ってたら疲れますから」

「ハハッ。言うねえー」

爽やかな容姿からは想像できない笑い方だった。

「先生もモテますでしょ？うちの学校は櫻井派か松本派か大野派か、なんて言われてますから」

「まあね……とでも言っとくか。……でもねモテてるだけだよ」

つまり彼女はいないってこと？
……って何で私はそのようなことを気にしてるんだろう。

「へえそうなんですか」

「…………」

なぜか先生は一瞬私を真剣な目つきで見て、フッと笑った。

「やっぱAさんは他の生徒とは違うね」

それはどういう意味……？

「えーそんなことないですよ」

私はなぜだかこのとき、笑ってしまった。

「……いつもそんなふうに笑ってればいいのに」

そしてまた微笑む。
先生の瞳が読めないのも初めてだ。

―――ほら、A、笑って。

どうして６年前が紛れ込んでくるのだろう。
苦しくなるだけなのに。