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４月が過ぎ、５月となった。
ＧＷは家族といつものメンバーで出かけた以外はずっと家にいて、小説を書いていた。
テスト１週間前までに書き上げねばならない。
中間テストの声がチラホラ聞こえる今日この頃である。
「あっ、和也と雅紀」
部室で原稿に煮詰まって、誰もいない自分たちの教室に移動して書いていたが、そこでも文章がスンナリと書けなくて、窓の外を眺めていた。
外では野球部がノックをしていた。そう、和也と雅紀は野球部所属なのだ。
どうしようか。原稿が進まないから家に帰るべきなのだろうが、まだ何となく家に帰りたくない。
しばらく野球部の練習風景を見て、それでも書けなかったら帰ろう。
そう思っていたら。
「あれ？Aさん？」
声をかけられてビクッとなった。
そう呼ぶのは一人しかいない。
「櫻井先生……」
同じ名字のよしみでわりかし先生とは話す方だと思う。
しかしそれ以上でもそれ以下でもない。
ただの先生と生徒だ。
「どうしたの？こんな所で」
「あー……原稿が進まなくて、野球部の練習を見てました……」
「そっか。Aさんは文芸部だったね」
そう言って微笑む先生の顔には夕日が当たって、綺麗な顔かたちがはっきり分かる。
「そういえば二宮と相葉は野球部だったな」
先生も窓の外を眺める。
「そうです」
「そうだ。Aさん、ちょっと手伝ってくれない？」
「えっ？」
「嫌？」
先生は上目遣いで言ってくる。
どうせ原稿はこのままだと進まないし、手と頭を動かせば文章が思いつくかもしれない。
というかその顔で頼まれ事をされたら忙しくても断れないと思う。
……一般論だが。
「嫌じゃないです。……手伝います」
「良かった。じゃあ俺の教室に来て」
先生はクシャっと笑って、歩き出す。
私はその後について行く。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2016年12月16日 11時
