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先生の授業だと50分があっという間に感じる。
パイプ椅子にかけたジャケットを着て、２−３の教室から去れば、溜め息の洩れないときはない。
「櫻井先生かっこいいよねー。私断然櫻井派！」
「先生、彼女いるのかな？」
「いるでしょ。あれぐらいのルックスだもん」
「そうかな？ダメ元で告白してみようかなあ」
先生の授業の後は女子のテンションが高い。
うちの学校の女子の半分ぐらいは我が校の誇るイケメンに恋をしているのではないだろうか。
櫻井、松本、社会科の大野先生……。
そういえば雅紀と和也もモテている。
週に一回は女子に呼び出されているのを見る。
かくいう私は櫻井先生を尊敬はしているものの、恋はしていない。
だって私は―――。
「A……呼び出し」
昼休みのことだった。
いつも通り彩華と美玖とご飯を食べて話しているときに、和也にドアの方を指差しながらこう声をかけられた。
和也の差す方には顔は見たことある気がするが、名前の知らない男子がいた。
またか、と心の中で呟く。
「どうせ断るんだろ？行って来いよ」
言葉は乱暴でも茶色い瞳を優しく向けて、和也は言った。
「うん……」
立ち上がって呼び出した男の元へ向かう。
「呼び出してごめんね。ちょっと……来てくれないかな」
男は照れた顔を見せて言う。
ごめんなさい。これからあなたの気持ちを踏みにじります。
そう言われて彼について行った先は裏門の桜の木の近く。
またここかよ、と心の中で呟く。
「あの……君のことが好きなんだ……友達からでもいいから、付き合って下さい！」
頭を下げた男を私は冷たく見下げる。
「名前もクラスも知らないあなたと付き合えない。まあ知ったところで付き合えるわけじゃないけど。……ご苦労様」
私は告白されたときにいつもそう言って、踵を返す。
いちいち律義に断っていたら疲れてしまう。
自分でも冷たいと思うし、実際そう言われたことがある。
そう言われたって私は誰とも付き合う気はない。
だって私は二度と恋をしないんだから―――。
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作者名：ユタカ | 作成日時：2016年12月16日 11時
