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Question-6 ページ10

6話〜動き出す〜

あの後俺達は逃げるように学校を立ち去った。
気付くのが一分遅ければ仲良くお説教されていたに違いない。
時間があれば例の溺死しかけた生徒に何かしら聞いておきたかったが、
そんな余裕はなかった。仕方ない。

〜蕗の自宅〜

それでも、俺はここで引き下がる訳にはいかない。
あれだけ(たん)()切って突然逃げ出すなんてやったら恥だ。
わざわざ退路を絶った意味がない。

「確か、ここらへんにあったはず...あった」

埃をかぶったタンスの中から懐中電灯を取り出す。
使うことがなかったためかなり古いものだが、
この際使えたら何でもいい。

「...点いた」

あまり強くはないが、前を見るには十分。
懐中電灯の電気を消し、部屋の真ん中の一番目立つ机の上に置く。

あとは明日の夕方。それを待つだけだ。

蕗はいつも通り料理を始めた。

ーーーーーー

『...』

『今年も、もうこんな時期かぁ』

降り続けていた雪は止み、今はすっかり夜空を月明かりが支配している。

今夜は綺麗な満月だった。
邪魔する者のいない空を、淡いならがも力強い光で堂々と支配している。

肌を触れる空気が冷たい。
時々吹く風が腕や首に突き刺さる。
ただ月光だけが輝く夜空で、この感覚だけが確かに今が冬であることを告げる。

痛い。
確かに寒いけど、痛い。

この寒さは確かに2月のもの。
もう感覚だけで大体の予想は出来るようになってしまった。

"あの日"になれば失う、この感覚。
そして、"あの日"になれば変わってしまう、この場所。

悲しい。
だけど、どうしようもない。
今更嘆いたって仕方ない。

もう、逃げられないから。
私はもう、"バケモノ"なんだから。

夜陰を引き裂く光は冷たく反射した。

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淀月九葉@修業中(プロフ) - まさかの急展開… (2016年5月10日 12時) (レス) id: c123e1c9e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:じかみそ | 作者ホームページ:   
作成日時:2016年1月31日 17時

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