山裾追憶録～Lost Memories～ (ページ8)

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Question-4 ページ8

4話～事件～

「常雨の森って、確かさ...」
「...うん、旧山道の途中にある小さい森だね」

この山には元々頂上に続く山道があり、
その途中に置かれた土地がここ"山裾"に当たる。
地形が変動したとはいえ山道自体が消えたわけではないので、
頂上に続く山道の跡はまだ残っている。
その山道の奥には分かれ道があり、
左の道は"十六夜(いざよい)峠(とうげ)"、もう片方の道は"常雨の森"に続いているらしい。

常雨の森の先には山頂があり、
十六夜峠の先には何があるか知らない。
なんせ登ろうなんて考えたことがなかったし、
何か嫌な予感がするからだ。

「んじゃ今回は山道の右の道に用がある訳だな」
「用が...？」
「あぁ、一つ思い出したんだよ。
去年この学校の生徒の一人が旧山道の途中で、
溺死しかけてた事件があってのは覚えてるか？」
「...」

あぁ。絶対覚えてないな。
まあテストで忙しい時期だったし、
仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。

...勉強してなかったから、俺はまだはっきり覚えてるや。
情けなっ。

「なんかその溺死しかけた生徒は急に"呪いだ"って言って騒ぎ出したらしいんだよ。
それで軽い騒ぎにもなったんだが...」
「...ごめん、よく覚えてないや」
「私はよく覚えてるよ～。
まっ、そんなおおげさなことじゃないけどね。
...あっ、"思うけどね。"に訂正しといて」

気がつくと凛は本を机に置いてこちらを向いていた。
どこからか知らないが話はそこそこ聞いていたようだ。

「それがちょっと気になってな...
何か、どうも"普通じゃない"気がしてならん」
「普通じゃない...ね」
「勘が鋭いですね」
「！」

ずっと話を聞いていた図書委員の女子が口を開いた。

「...仕事は大丈夫なのか？」
「今日はもう一人いるので大丈夫ですよ」
「そうか。ならいいや。
それで、勘が鋭いってのは...？」
「あの森では、2年に1回の頻度で決まった日に人が溺れかけているんですよ。
大体40年くらい前から、去年までずっとです」

やっぱり普通ではなさそうだ。
いよいよもって"呪い"って言葉の重みが感じられるようになってきた気がする。
その女子もかなりおどおどしているようだ。

「なるほど...奇妙だな」
「怖いですよね...
それで、被害に遭った人からは有益な情報は全くと言っていいほど得られてないらしくて...」
「手掛かり0か...

これは、行くしかないな」

蕗は決心を固めた。