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夕暮れの時
柔らかなピアノの音色
公園にふたつ伸びる長い影
揺れるブランコ
「なにしてるの？」
あどけない少女の幼い声
「あそんでる」
日に焼けた薄茶色の髪をした少年が答える
「ままは？」
「…ままはいない。ぱぱはおしごと。」
今度は黒い髪の少年が答える
「そうなんだ！わたしは今ピアノのじゅくのかえりなの！まどからふたりが見えてね、何してるのかなって思って来たの！」
2人の少年はブランコを降りると不思議そうに顔を見合せてからこちらを見た
「ピアノって、あの目の前のおうち？」
「さっきまでピアノをひいてたのはきみ？」
「そうだよ！カノンって曲！わたし大好きなの！」
ピアノの音色を聞いてくれていたのが嬉しくて、思わず声が弾む
そして耳に残るメロディを口ずさめば2人の少年の表情が少し和らいだ
「おれも好き、ままがよくひいてくれた」
「ぼくも好き、心があったかくなるから」
3人で、時折ちぐはぐになるメロディを歌う
寂しそうだった少年達の表情にはいつの間にか笑顔が浮かんでいた
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どのくらいそうして居ただろう、公園の街灯に灯りがともるとどこからともなく自分を呼ぶ声がする
「Aー！」
「あ、お母さんだ！わたしもうかえらないと！」
後ろを振り返ると母が公園の前から手を振っているのが見えた
「あしたもピアノのじゅくある？」
茶髪の少年が手を引いてくる
「あるよ！」
「じゃあ、またあした会える？」
黒髪の少年ももう片方の手を引いてくる
「もちろん！」
『それじゃあ、またあした』
最後にそう言ったのは誰だっただろうか
確かに覚えているのは、
約束の"明日"に
少年達が公園へ姿を現す事はなかった
その事実だけだ。
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作者名：StarDustStudio | 作成日時：2023年5月14日 19時
