No.7 ページ7
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──正直言って、「
あれから剣士は作り笑顔を覚えたし、他人の前で見せる笑顔は大概その薄っぺらいモノだった。掴み所が無い、のらりくらりとした定義の無い人間になった。…否、掴み所を無くしてしまった。ぶっちゃけ迷子なのである。何処に行けば良いのか分からない。何処に行っても悪い気がする。
まだ一年も経たない頃はそれこそ迷子で、情緒不安定と言うのも言葉違いの気がするが、コロコロと剣士自体が変化していた。
が、ある日ぱたりとそれが止んで、ルーレットの様に目まぐるしく入れ替わっていた剣士は固定された。幼稚で軽率、デリカシーもなく馬鹿丸出し。曰く「いい方法が思い付いたから実践した」。推測でしかないが──恐らくその“いい方法”を実践した為に、彼は自分の内を焦がす程燃え盛っていた情熱を亡くしたのだろう。
「でもやっぱりさ、俺らに対する批難も止まないよな。まぁ人殺しがなんで悠々と生きてるんだ〜ってなる気持ちも分からなくもないし」
「やめてやそんな胸糞悪くなる話」
「んーまぁそうか。んじゃあ白瀬なんか話題振ってよ」
「なんで話題振るのを私に振るの」
太刀はそれを聞いて少し考えると、その話題を思い出して持ち出した。
＊
「麗華さん、お仕事にお暇がありましたら、良ければこの後私の働いてるカフェにいらっしゃいません？ 新しいメニューも紅茶もありますよ。是非麗華さんにもお試し頂きたいです」
左右に桃色の三つ編みを吊り下げた小学生程度の少女、『桃』。彼女が今いるのは、とある会社の──社長室。そこにいるのは、彼女の“友人”。『月詠 麗華』だ。
そして彼女は小学生ではない。れっきとした大人の女性だ。とは言え、幼い顔立ちやくりんとした大きな目、小柄で華奢なその容姿は、とてもではないが「女性」とは言い難い。
今となっては麗華の会社に姿を現すのも慣れたモノだ。彼女の趣味で作っている服のデザイン画を持ってきているのだ。
「是非行かせていただきます！」
「はい！ …それにしても、東京も綺麗になりましたね。皆も成長しましたし」
小さく微笑みながら何処か物憂げに、桃は呟いた。「変われないのは、私だけですね」
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